あおり運転が厳罰化へ

NO IMAGE

あおり運転、年明けに厳罰化へ 免許取り消し、懲役刑も

警察庁は6日、道交法を改正してあおり運転を定義し、罰則を創設する方針を自民党の交通安全対策特別委員会で明らかにした。違反1回で15点以上として免許は即取り消し再取得までの欠格期間は1年以上罰則は懲役刑も想定している。
悪質なドライバーが死傷事故を起こす前に厳正に処罰してあおり運転の抑止につなげる考えだ。委員会での議論も踏まえて細部を詰め、年明けの通常国会に関連法案を提出する。
示された案などによると、車間距離保持義務、急ブレーキの禁止など既存の違反を「通行の妨害目的」で行い「交通の危険を生じさせる恐れ」を引き起こした場合に、あおり運転として定義する。

引用:河北新報ONLINE NEWS (2019年12月6日)

はじめに

従来の法令によると、いわゆる「あおり運転」を違反とするために、警察は、車間距離保持義務違反(道路交通法26条、平成21年一部改正)や暴行罪(刑法208条)を適用して、対応してきました。

大変厳しい法令が提出されることになります。行政書士資格試験で、ふつうに問われて答えるように、日本は、官僚政治だそうなので、たぶん両院で通過して制定されることになるのだろうと思います。

法律資格試験のなかで道路交通法は、出題されませんが、行政書士試験には、行政法的視点が、ちょっとだけ問われることもあります。「あおり運転」規制に関して、行政警察作用(公物警察)といわれる道路交通警察の作用の視点から考えることと、すこしだけ思うことも含めて話したいと思います。

従来の規制

これまでの規制の内容

これまでの「あおり運転」を規制する条文がこちら。

直接的に規制する条文

道路交通法26条(車間距離の保持)
車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。

本条の罰則(要旨)

道路交通法119条1項1の4号 高速自動車国道等において、第26条(車間距離の保持)の規定の違反となるような行為をした者は、三月以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。

道路交通法120条 高速自動車国道等に限らず、第26条(車間距離の保持)の規定の違反となるような行為をした者は、五万円以下の罰金に処する。

刑法208条(暴行)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

2018年~2019年「あおり運転」違反の数

社会的関心の高まりを受けて取り締まりが強化された2018年の車間距離保持義務違反は1万3025件と前年の約1・8倍に達し、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷の妨害目的運転)25件、暴行24件、傷害4件などに上った。今年1~10月の車間距離保持義務違反は1万2377件に達する。

引用:毎日新聞(2019年12月6日)

今年2019年は、10月の時点ですでに、あおり運転の違反による検挙数が、すでに1万2377件にものぼっていることに驚くばかりです。

事件の被害や影響が、ますます重大化している近年においても、いまだに、これだけの数の「あおり運転」違反が横行していて、警察が見逃せないと思う程まで悪質な運転をしているという現状るわけです。

参照記事は、以下など多数


なぜ従来の規制に変更が必要なのか?

行政活動の原理から確認

日本の行政の原理のなかには、いくつかありますが、そのなかに「法律の留保の原則」「法律の優位の原則」というのがあります。これは、行政活動というのは、常に法律に根拠のある行政活動だけを行わねばならないし、また、法律に定めの限度を超えて、いろいろと国民の自由を制限したりなど作用を及ぼしてはいけない、という原理です。

改正する理由:政府与党からの意見

前掲の毎日新聞(2019年12月6日)によると、現在のところ「主に適用されている車間距離保持義務違反の罰則は、高速道路の場合で「3月以下の懲役または5万円以下の罰金」で、違反点数も2点にとどまる。政府与党からは「悪質なあおり運転を想定していない現行法による取り締まりには限界がある」として法整備や厳罰化を求める声」があったのだそうです。

現行法の問題点から改正理由・改正法の運用を考えてみた

政府与党は、ほぼ政権≒政府に近いので、たぶん現場での実践上の問題とかがあるのかもしれません。

そうだとすれば、おそらく道路交通警察の現場では、実際上、条文に書いてあることだけを適用していると、実質的に「あおり運転」であるのだとしても、条文に照らしてみると、違反とまでは言いきれない、などの行政活動原理に違背するおそれがあったのではないかと思います。

といいますのは、従来の条文が規制しているのは、あくまでも、「前方の車が急停止したら、後ろから追突してぶつからないように、一定の安全な距離を空けておきましょう」という主旨であるわけです。

しかし、実際の「あおり運転」といいうのは、極めて急に接近して、前方の運転手に自身の存在を覚知させることによって、衝突の恐怖を与えて畏怖を生じさせ、ないし、当該恐怖によって、本来希望する運行速度を超えた速度による運行を強要させるような運転です。

その「あおり運転」の実質というのは、前方の車両の通行の妨害という目的に貫かれた行為であって、その態様というのは、かならずしも、車両間隔が接近しているときだけに限りません。具体的には、接近したり、あるいは、離れたり、チカチカとライトをパッシングしたり、ときには、クラクションを鳴らしたり。そういう、いろんな方法を使って、前方の運転手を恐怖に陥れる運転行為です。

繰り返しますが、従来の規制は、単なる車間を空けましょうという従来の規制だけです。取り締まる側というのは、かかる「あおり運転」の客観的な外形だけを見て判断しなければなりません。もちろん、任意でお話を聞いたら、素直に「あおり運転しました。」と言えば、事情は異なると思いますが、そうでなければ、一律に見た瞬間わかる違反ではないのが、特徴です。

あおり運転に関して、外形上、100%の確証を持って「あおり運転してましたね」と言い切るためには、違反者が継続的に前方の車両に接近した状態を保持していなければ、あくまで客観的な外形だけで、これを違反と言えません。

従来の規制では、上に例示したような、近づいたり離れたり、パッシングしたりクラクションしたり、という行為は主観的にみれば実質的に「あおり運転」とみなせても、「暴行」なのか、双方に話を聞かないと客観的には断ずることができません。外形だけみて取り締まろうとするのは、やや難しい側面があると思料します。

本改正後の改正法の運用方法を推測してみました。

取り締まる側は、客観的な外形をみて、「あおり運転」の類型タイプにあてはめることができる運転を見つけたら、これを止めたりして、話を聞いて「妨害の目的」をみることができたらはじめて取り締まる、というような、濫用にあたらないような、行政裁量になるのではないかとかんがえました。

海外の状況

法令を作ったり、改正したり、改廃するときの一作法として、外国など同じような社会における法制度を参考にして、比較(輸入)するというのがあります。

アメリカの状況

若い女性が「まったくもう、さっきフリーウェイでデッカイSUVにテールゲートされちゃって、頭にきちゃう!(英語)」なんて会話をしているのをよく聞く。そして実際、筆者自身もこれまで全米各地で「テールゲート」されたことがある。
その経験でいえば、地域によって「テールゲート」に遭う頻度に差があるように思える。言い換えれば、運転が荒い地域で「テールゲート」が多いのだ。
具体的には、テキサス州、ミシガン州、そしてカリフォルニア州で「テールゲート」が多い印象がある。

引用:MOTA 記事・ニュース,https://autoc-one.jp/special/5005161/

とのことです。引用文中の「テールゲート」の語は、”tailgate”を差しており、日本語では、車両特にステーションワゴンのような形体の車両の後部ドアをいいます。アメリカでは「あおり運転」を一般にテールゲートと呼ぶのだそうです。

American Automobile Association’s Foundation for Traffic Safety(アメリカ自動車協会)の2016年の統計調査では、「運転中に激しい怒りを感じたことがある」と答えたドライバーが全体の80%もいることが分かっている。
驚くべきは、4900万人が「別の車両が車線変更するのを邪魔しようと試みたことがある」と回答し、そのうち半数が「割り込み運転をした経験がある」と回答していること。さらに、800万人が「車から降りて別のドライバーに文句を言いに行った経験」を持ち、600万人が「意図的に衝突事故を起こす」などの行為をしたことがあると答えていることだ。

引用:日刊SPA!(2019年9月26日)

アメリカの交通事故における死亡者数は、日本の約10倍に相当する年間約3万3000人です。アメリカと日本の人口比は、アメリカが日本の約2.6倍しかないので、アメリカの交通事故死亡者は、非常に多い数字です。これが、すべて「あおり運転」に起因するかは、わかりません。しかし、少なくともアメリカでは、運転中に激しい怒りに苛まれるドライバーが全体の8割いるという数字は、スムーズに死亡者数の割合を説明するようにも思われます。

ドイツの状況

追い越しの意思を知らせるために、短いクラクションまたはライトによる「あおり運転」が法律で許可されているが、安全な車間距離を取らなければならない。
運転手は車両速度(km/h単位)の半分の値をメートル単位にした車間距離を必ず確保しなければならない。例えば、100 km/hで走行中の場合、最低50 mの車間距離を確保しなければならない。車間距離不保持の場合は走行速度と車間距離により最大400ユーロの罰金および3か月の免許停止となる。
また、渋滞時を除き右側(路肩側)からの追い越しは固く禁じられている。車両が追越車線を占有している場合も許されず、このような場合には警察は車両を停止させ、両方に罰金を科す。左側車線(中央側)が混雑しているか、低速で走行している場合に、わずかに速い速度で追い抜くことができる。

引用:wikipedia.org/wiki/あおり運転

とのこと。有名なはなしですが、日本の行政法や刑法は、おおむねドイツから輸入したものです。ドイツは、古来から警察法規を厳密に遵守することを当然とするような国民性が強いともいわれているし、国家による統治の効果として国民に自由が生じているというような発想も根強くあったりするようなところもあります。悪質な運転については、裁判所は、生涯永久的に運転資格をはく奪する判決もできるのだそうです。

 

おわりに

あおり運転は危険運転の一つに分類され、相手を事故・死傷などに追いやった場合は危険運転致死傷罪が適用され最長20年の懲役(加重で最長30年)に処され、運転免許は基礎点数45 – 62点により免許取消・欠格期間8年以上の行政処分を受けることになる。故意(または未必の故意)で人を死に追いやった場合は、殺人罪が適用され、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処せられることにもなる。また、故意に幅寄せした場合は暴行罪として立件される場合もある。

引用:wikipedia.org/wiki/あおり運転

法改正があろとなかろうと、「あおり運転」は、極めて危険かつ重大な悪質行為であることには、変わりありません。

引用:警察庁Web,npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/aori.html

危険で悪質な運転に遭遇したら

安全な場所から110番通報
危険な運転者に追われるなどした場合は、サービスエリアやパーキングエリア等、交通事故に遭わない場所に避難して、ためらうことなく警察に110番通報をしてください。

危険で悪質な運転を回避するために

思いやり・ゆずり合いの安全運転
車を運転する際は、周りの車の動きなどに注意し、相手の立場について思いやりの気持ちを持って、ゆずり合いの運転をすることが大切です。
また、交通事故防止のためには、前の車が急に止まっても、これに追突しないような安全な速度と車間距離をとることが必要です。
正しい交通ルールを守った運転で、皆が安全・快適に通行できる交通環境をつくりましょう。

時事カテゴリの最新記事