二輪車が停止中の車両を左側から追い抜くのは違反?

二輪車が停止中の車両を左側から追い抜くのは違反?

はじめに

今日、危うく死にかけてしまいました。だんなさんが運転する車中で、わたしは、助手席に乗っていました。歩道に降りるために、ハザードランプをつけてもらいドアを開けました。ちょうどそのときの、道路状況というのは、前方の信号機が赤信号でした。

ドアを開けた瞬間、わたしたちの車両の後方左側からバイクが追い抜いてきて、ドアを開けたわたしと接触寸前で停まりました。運よくぶつからなくて、なぜかわたしは、すみません!と頭を下げてしまいました。でも、よく考えてみると疑問が。

道路交通法28条1項(追越しの方法)
「車両は、他の車両を追い越そうとするときは、その追い越されようとする車両(以下この節において「前車」という。)の右側を通行しなければならない。」

 

私は、この条文に抵触すると考えたわけです。

バイクの人たちは、信号待ちで停まっている車を左から追い越していいのでしょうか?

県内の道路安全を司る神奈川県公安委員会に聞いてみました。

主文:いきなり結論

神奈川県公安委員会道路交通相談担当によると

信号待ちで停止している車両の左から、二輪車が追い抜くことに関して、これを直ちに違反であるとか、そうでないとか一律に断ずることはできない。まずは、そもそもかかるバイクの行為を違反というふうに直接的に規定する条文は、存在しない。

とのことでした。どちらとも言い難く、個別具体的な状況に応じて判断するそうです。

理由:根拠をしらべてみた

こんなわたしですが、行政書士資格をもっているので、道交法(行政法の一分野で営造物警察といわれます。)に関心をもって調べてみました。ちょっとだけレポートします。

用語の定義から確認:「追い抜き」

神奈川県公安委員会によると、バイクが停止している車両の左側を越えていく運転の態様のことは、「追い越し」とは言わず「追い抜き」というそうです。条文をみると「追い越し」は規定があります。しかし「追い抜き」の定義はありません。「追い抜き」というのは、警察業界用語だそうです。

とりあえず「追い越し」をみてみます。

道路交通法2条(定義)1項21号
「追越し 車両が他の車両等に追い付いた場合において、その進路を変えてその追い付いた車両等の側方を通過し、かつ、当該車両等の前方に出ることをいう。」

そうだったのか!追い越し。

この定義によると、同じ車線を走行中だった後ろの車両が、車線変更をして、前に出てきて、また当該同じ車線の前方に出てくることを追い越しという、ということになります。

追い越し違反の根拠のあてはめ:規制対象外

道交法28条(いわゆる追い越し方法違反)の規定が、規制の対象としているのは、走行中の車両だけ。動いていない車両のことは、規制の対象外

とりあえず、神奈川県公安委員会によると、二輪車のみなさまは、信号待ちで停まっている自動車の左側をすり抜けて追い越して信号待ちの先頭に、出てよろしいということなのだそうです。

もしも、わたしが助手席側のドアを開けて、二輪車にぶつかったら…。わたしによる二輪車に対する進路妨害になる可能性も否定できない。むしろ、少なくとも言えることは、わたしも過失割合を有することは明白。

なんと恐ろしいことでしょうか・・・。自動車を降りるときには、ミラーや目視で前後をよく確認してから降りるようにしましょう!!!

車を降りるときには、前後よく確認してからドアを開けて下車!基本中のキホン

わたしは、やっぱりただのぽんこつでした。。。

停車中の車両を追い抜く二輪車が問責される過失

では、二輪車はいかなる方法でも、停車中の車両を左側から追い抜いていいかというと、そうではありません。

いうまでもなく、歩行者がいるときには、徐行です。

道路交通法71条(運転者の遵守事項)1項4号
「道路の左側部分に設けられた安全地帯の側方を通過する場合において、当該安全地帯に歩行者がいるときは、徐行すること。」

 

また、交差点に近い場所では、徐行運転が義務付けられています。

道路交通法42条(徐行すべき場所)

「車両等は、道路標識等により徐行すべきことが指定されている道路の部分を通行する場合及び次に掲げるその他の場合においては、徐行しなければならない。
一 左右の見とおしがきかない交差点に入ろうとし、又は交差点内で左右の見とおしがきかない部分を通行しようとするとき(当該交差点において交通整理が行なわれている場合及び優先道路を通行している場合を除く。)。
二 道路のまがりかど附近、上り坂の頂上附近又は勾こう配の急な下り坂を通行するとき。」

これによると、停車している車両の左側のいわゆる「路側帯」または「路肩」と呼ばれる部分を走行して、当該車両を追い抜いていく二輪車は、道交法が定める徐行義務を追っている。したがって、交差点に近接したところを通行するときには、何らかの障害の発生を常に予見しながら、安全な速度で走行しなければならない義務を負っている、というわけです。

二輪車は、交差点の付近など危険が容易に予測される場所では、常に直ちに停止できる速度で徐行しなければならない。

停止できず、なにかと接触したときには、高度に過失責任を負う。

道路交通安全の相談は、警察を頼りましょう

行政「指導」の活用

神奈川県公安委員会によりますと、救いの言葉がありました。

「二輪車は、たしかに交差点の信号待ちで停止している車両の左側を追い抜くことを、直ちに違法ということはできないが、そもそも、自然に考えれば、だれがみても危うい運転方法といえる。そうした道路交通の信義則のうえにおいて、だれがみても危険が潜んでいる交差点の近傍において、徐行をするのは当然中の当然といえる。」

「違反として規制することはできなくても、行政指導として「指導」することができるので、危ないと思う運転をする車両を見たら、最寄りの警察署に頼んで、指導してもらうという手段を活用してほしい。」(神奈川公安担当)

とのことでした。通常、行政活動の結果、私人に対してなんらかの力が加わるときには、行政作用といって根拠にあたる法令の根拠が必要になります。しかしながら、行政指導というのは、講学上も実務上も、直接の根拠条文がなくても、指導をすることができます。相手方に、なんらの法律効果ももたらさないことから、そのように定着していて活用されています。

しかしながら、行政指導は、これに従わないでそのまま指導に反する行為を続けていると、その後に予定されている制裁的な措置が観念されるのが通常です。それなので、暗黙に強制力が潜んでいるとかいわれたりもします。

ふつうに考えると、わたしのような生粋の日本の小市民は、警察官から「指導」されたら、それがどんな内容であろうともビビッてしまい言うことを聞かざるを得ません。

公共の安全のために情報共有

正義感の強いかたは、危ない運転を見たら注意とかされるかもしれません。でも、公安委員会の道路交通のご担当のかたが仰るように、どちらか一方だけが悪い、と完全に言い切ることは、それほど簡単なことではないと思います。

最近は、物騒な人間関係の事件があるから「危ないことがあったら、決して自分で対応せずに、警察に相談してください」ととても親切におっしゃってくださいました。とはいえ「警察に相談とか気軽に声をかけるだなんて、なんだか敷居が高いなー」と思ってしまいます。

でも、実際にはとても親切で丁寧で、わかりやすいお話をしていただきました。みんな同じ日本人なので、道路交通の安全のために、積極的に警察のお力をかりて、危険予測・危険回避が促進するといいなと思いました。

 

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